鍼灸マッサージの適応症



 血流の改善や疲労回復、自律神経系の調整、免疫能力の活性化、鎮痛作用、筋緊張の緩和といった様々な作用・効果があることが、科学的にも解明されつつある現代では、鍼灸マッサージ治療は多くの病気等に応用されています。
 一例として、痛みについて考えてみましょう。この場合に、鍼灸マッサージに適応する疾患として挙げられるものには、腰痛や肩凝り、膝関節痛など筋肉や身体運動に関わる痛みの症状が最も多いと思われるのではないでしょうか。これらの痛みに対し鍼灸マッサージが有効であることはもちろんですが、しかし、それ以外にも、頭痛や腹痛、胃の痛みといった内臓に関わる痛みの症状にも、その効果は同じように期待されます。
 更に、それらの痛みの原因が、ストレスや精神的・肉体的疲労など、西洋医学(投薬など)では対処しにくいものであった場合でも、鍼灸マッサージの、心身のバランスを調整する、生体の自然治癒力を高めるといった側面からのアプローチを加えることによって、原因そのものの改善にも効果が期待できるのです。
 また、特に寝たきりや歩行困難であるなど、介護保険において要介護者・要支援者とされる方の二次的障害(褥瘡など)の予防や廃用性症候群(関節の拘縮、筋の萎縮など)に基因する疼痛症状の緩和等に優れた効果があり、また、患者本人だけでなく、介護者の、日々の介護疲れからくる腰痛や肩凝り等の症状の改善としてもお勧めできる治療術です。
 最近では、上記のようにいろいろな疾患に伴う疼痛や、老人性の疾患全般、また難病と呼ばれている病気に対する有効性も認められ、治療に応用されることが増えてきています。
 また一方で、鍼灸マッサージは、症状や病気の改善といった「治療」としてだけではなく、体質改善や健康増進といった健康管理、つまり「病気にならないための健康な身体づくり」にも優れた効果を発揮します。
 これは「未病治(未病を治す)」と言って、東洋医学の中では古くからある基本的概念です。「病になってから、その病を治す」という西洋医学の考え方とは異なり、「いまだ病にあらずを治す」つまり「身体の不調和が病として表面に現れる前に、その根元を治すこと」こそ大切であるという考えで、「病気」という苦しい状態を未然に回避させることになるのですから、人間にとって"最良の保健医療"とも言えるものです。

【適応する主な疾患名】
○WHO(世界保健機構)で定められている鍼の適応症 ― 41疾患
 頭痛、偏頭痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺
 メニエル氏病
 白内障、急性結膜炎、近視、中心性網膜炎
 急性上顎洞炎、急性鼻炎、感冒、急性扁桃炎
 歯痛、抜歯後疼痛、歯肉炎、急性咽頭痛炎
 急性気管支炎、気管支喘息
 食道・噴門痙攣、しゃっくり、急性・慢性胃炎
 胃酸過多症、胃下垂、麻痺性イレウス
 慢性・急性十二指腸潰瘍
 急性・慢性腸炎、便秘、下痢
 急性細菌性下痢
 打撲による麻痺、末梢神経系疾患
 多発性筋炎
 神経性膀胱障害、肋間神経痛、頚腕症候群
 坐骨神経痛、腰痛、関節炎、夜尿症
○その他、鍼灸マッサージの適応症となるもの
 循環器系   本態性高血圧症、本態性低血圧症、神経性狭心症、不整脈の一部、心臓神経症
 呼吸器系   気管支喘息、過呼吸症候群神経性咳嗽
 内分泌代謝系   肥満症、糖尿病、心因性大飲症、腺機能亢進症
 消化器系   消化性胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、下痢便秘症、神経性嘔吐症、腹部膨満症、呑気症、神経性食思不振症、痔疾
 神経系   頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症
 泌尿器系   夜尿症、過敏性膀胱
 骨・筋肉系   慢性関節リューマチ、全身性筋肉痛、外傷性神経症、書痙、痙性斜頚、頚腕症候群、チック、脊椎過敏症
 皮膚系   神経性皮膚炎、皮膚掻痒症、湿疹、円形脱毛症、多汗症、慢性蕁麻疹
 耳鼻咽喉科系   メニエール症候群、咽喉頭部異物感症、難聴、耳鳴り、乗り物酔い、嗄声、失声、吃音
 眼科系   緑内障、老人性白内障、眼精疲労、眼瞼痙攣
 生殖器系   インポテンツ、不感症、月経痛、無月経、不妊症、更年期障害
 小児科系   小児疳の虫、夜驚症、腺病質、小児消化不良症
 その他   臀部・腰部・手足の冷え、肩凝り、のぼせ、不眠等の不定愁訴


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